<行って来ました!>
今、5年の歳月をかけて準備された、「原石からジュエリーまで、宝石のすべてがわかる展覧会」が国立科学博物館で開催されています。先日足を運んでまいりました。
第1章~第5章までで構成された素晴らしい内容をご紹介いたします。
<於 国立科学博物館 2022.6.19(日)まで>
長い歴史の中で人々に愛され続けている「宝石」。地球内部で形成された多種多様な鉱物の中から、美しさ、耐久性、適度な大きさ(身に着けられる)を兼ね備えたものだけが、人々の心を掴み加工されて「宝石」となるのです。
様々な自然現象の中から生まれる鉱物の中で、この要件を満たす物はごく稀です。
本展では、宝石の誕生から美しい宝飾品になるまでを科学的な視点から紹介、またご覧になった皆様が宝石を通して奇跡的な地球の営みと人々がたどってきた軌跡に思いをはせて頂ければ幸いです。(ご挨拶より抜粋)
第1章「原石の誕生」~原石はどこでどのようにできるのか~
宝石の原石は、地下の深いところで誕生した鉱物です。地球より高温高圧の環境で長い年月をかけて多様な化学組織をもった鉱物が生まれます。宝石の原石が含まれている母岩(岩石)を4つのタイプに分け、宝石が誕生するプロセスを紹介しています
火成岩から見つかる宝石
火成岩はマグマが冷えて固まった岩石です。つまり地下にできた高温(800~1200℃)マグマが固まる過程で結晶化した鉱物で、代表的な宝石としては、ダイヤモンドやペリドットがあります。
<ダイヤモンド>
熱水脈から見つかる宝石
<アメジストドーム。巨大です!>
熱水脈は、地下深くに存在する100℃を超える熱水が岩盤の割れ目などを通って上昇した跡です。熱水に溶け込んでいた物質が、温度と圧力の低下と共に溶けきれなくなり、割れ目などの隙間に沈殿・充填した鉱物が現れます。代表的な宝石はアメシストや水晶などです。
ペグマタイトから見つかる宝石
ペグマタイトは、多くの揮発性(水やガス)成分を伴ったマグマが固まった特殊な火成岩です。これは大きな結晶ができやすくなります。代表的な宝石はトパーズやトルマリンなどです。
<トルマリン>
<アクアマリン>
<アマゾナイト>
<ペグマタイト>
変成岩から見つかる宝石
変成岩は、既存の岩石が熱や圧力を受けて再結晶してできた岩石です。プレート運動により地下深くに運ばれたり、高温のマグマに接触したりして生じます。地下深くでゆっくりと結晶化が起こりますが、隙間がないため大きな結晶が出来ることは滅多にありません。
また鮮やかな色の要因となる成分は、熱や圧力と共にもたらされるため変成岩からは、ルビーやエメラルドのような濃い色の宝石が見つかります。
このようにして宝石の元である「原石」が誕生するのです。
<ルビー>
<ルビー>
<ルビー>
<ヒスイ>
<ガーネット>
ここでクイズ!「宇宙に宝石はあるか?」
という興味深い展示がありましたのでご紹介します。
地球以外の天体に宝石と言える石はあるでしょうか。
隕石の中には、美しいペリドットを含んでいるものが見つかっており、パラサイト隕石と呼ばれています。この隕石は太陽系が出来た頃、ドロドロに溶けた小惑星の内部で出来たと考えられています。
つまり隕石に含まれているペリドットは、一度解けた小惑星が砕けたかけらです。同様に、地球や火星や金星の内部にあるマントルも、主にペリドットで出来ていると考えられています。
なお隕石からはダイヤモンドも見つかっているそうですが小さすぎて宝石にはならないようです。
第2章 「原石から宝石へ」 ~原石はどのようにして宝石になるのか~
原石からいくつかの宝石にカットの例
原石が見つかると地下の鉱床を調べて採掘がおこなわれます。採掘は露天掘りや坑道掘りなど原石に合わせて行われます。しかし掘り出されただけではまだ宝石ではありません。
「カット」の出来栄えが、原石の大きさや品質に劣らないほど宝石の評価を左右します。
宝石の特性を最大限に引き出し、良質部分だけを残しつつ原石の大きさを活かすようにカットが施されることで宝石の価値は高まります。
ここではダイヤモンドを例にとり、原石が宝石になる為に大切な「カット」について見ていきます。
まず「ダイヤモンドのカットの変遷」
およそ2800年前に発見されたダイヤモンドは長いことそのままの形で珍重されていました。14世紀頃にダイヤモンドの粉末で磨く技術が出来てからようやく宝石としての価値を見出されます。さらに17世紀には現在のブリリアンカットの原型が出来上がります。この頃からダイヤモンドの美しさは多くの人々を魅了していきます。19世紀に入り多くの宝石を正確にカットすることが可能となり普及が進みました。現在もなおカット技術の進歩は続いています。
「宝石の代表的なカット」
宝石のカットスタイルは多数の研磨面(ファセット)で囲まれた多面体に仕上げるファセットカットとファセットをつけないカットに分けられます。
10種類の代表的な宝石のシェイプ(輪郭)
ファセットカットは、石の中に入った光を反射させ輝かせるカットでローズカット、ブリオレットカット、パビリオンカットに分類できます。ダイヤモンドの様に透明度の高い石に施されます。
これに対しファセットのつけないカットにはカボッション、スラブ、ビーズなどがあり、半透明から不透明な石、あるいは高度の低い石に用いられます。
「宝石のカット技術」
ファセットカットの中でも、無色透明なダイヤモンドの輝きと煌めきを最大限に引き出すためにデザインされたのがラウンドブリリアンカットです。
ダイヤモンドの屈折率を考慮し、上から入った全ての光が内部で反射して上に戻ってくるように設計された、58面のファセットを持つカットで、現在はこれが主流になっています。
<ブリリアントカットの変遷>
<ブリリアントカットの工程>
第3章 「宝石の特性と多様性」 ~様々な宝石の魅力~
人々を魅了し続けている宝石、その宝石の条件として必要な美しさと耐久性、それはどうやって生み出されているのでしょうか。
宝石の美しさは、輝き・煌めき・彩り(いろどり)という3つの要素で説明されますが、それらは宝石の光に対する作用に深く関係しています。
次に宝石の耐久性には、硬さ・靭性(衝撃に対する強さ)・科学的安定性があり、これらは構成元素の種類や原子配列に起因しています。
ここでは200種を超える多様な宝石が展示され、それぞれの特性を紹介しています。
「輝き」
まず宝石の美しさの第一の要素である「輝き」は光の反射によるものです。
透明な板ガラスと同じ様に透明な宝石のファセット(研磨面)に対し斜めに差し込む光は反射します。
また屈折率は、光を表面で反射するか、内部に通過するかを決定します。屈折率が水晶より大きいダイヤモンドは、内部反射も多くなり上から入った光が底で反射され戻りやすくなるため光の反射も多くなります。
屈折率と分散
また多くの宝石が七色に煌めいて見えるのは「光の分散」と言って、光の波長によるわずかな屈折率の違いがプリズムの様に七色に分解されるためです。
特にダイヤモンドは光の分散が著しく大きいため、通過した光は鮮やかな七色に光に分かれて煌めくのです。これを「ファイア」と呼んでいます。
「彩り」
次に第二の要素である「彩り」。
宝石の色は光の吸収によるものです。科学が発達する以前は赤はルビー、青はサファイア、緑はエメラルド、黄色はトパーズと、宝石は色で分類されていました。
しかし微量成分や微細な内包物、また結晶構造の乱れなどにより色合いは多種多様で複雑なため、現在では宝石の分類も、色ではなく科学成分や原子配列などに基づいた鉱物の分類に合わせるようになっています。
色相環
計65種の宝石が色相と濃度順に並べられ宝石の多様性、類似性を一覧することが出来ます。
ルビーとサファイアの色
解りやすい例として「ルビーとサファイアの色」が有ります。二つはそれぞれ赤と青の宝石の代表ですが、主成分と原子配列は同じで、鉱物種としてはどちらもコランダムに分類されます。これが微量成分としてクロムを含むと赤に、鉄とチタンを含むと青になります。
サファイアはもともと青い宝石の名前でしたが、近年ではルビー以外のコランダムの宝石をホワイトサファイア・イエローサファイア・バイオレットサファイアなどと呼んでいます。
中でもクロムと鉄の微量成分を含むパパラチアサファイアはその優しい色合いから蓮の花の色と呼ばれ人気の希少石です。
またルビーは現在でも、濃い赤系のコランダムだけを指す宝石名として使われています。
「耐久性」
宝石に求められる、欠かせない耐久性には、摩耗に対する強さ(硬度)・衝撃に対する強さ(靭性)・温度、湿度、光、酸などに対する強さ(安定性)が求められます
美しさに加え、これらの耐久性を兼ね備えた石こそが宝石としてふさわしいと言えるのです。
モース硬度1~10
硬さを表す代表的な指標として、基準石と比較して引っ搔いた時に傷がつくかどうかで判断する「モース硬度」があります。モース硬度は10段階に分かれます。ちなみに最も硬い10がダイヤモンドです。
「サイズ感」
そして宝石としての大切な要素としてもう一つ「適度な大きさ」、つまり身に着けれれる大きさかどうかが有ります。
とてもきれいだけれども巨大すぎて身に着けられない宝石達です。
第4章 ジュエリーの技巧 ~宝石はどのようにして宝飾品になるか~
カットされ美しく輝くルース(磨いた石=宝石)は、貴金属の台座(ベゼル)を留めて宝飾品、つまりジュエリーとなるのです。
台座には強度や加工性、さらに耐食性が求められます。そのためゴールドやプラチナが用いられます。
希少なルースを宝石に仕立てるにはこれらの素材を使ってセッティングが施されます。そこには様々な工夫がなされさらなる価値が付加され美しいジュエリーに仕上がるのです。
最後の第5章は、「宝石の極み」と題し、古代の人々の魔除けやお守りとしての役割から、王侯貴族の権力の象徴であった宝石等、王家が誇る宝石達が多く展示され、特にティアラの数々には目を見張ります。
ここは残念ながら撮影禁止だったためお目にかけれませんが、この素晴らしい特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」は2022年6月19日(日)まで、上野の国立科学博物館で開催されています。
是非皆様お出かけください(^^)/